第4話:受験生のために (1)

受験生のみなさん! これからが勝負です!!!
〜今回はマジに受験勉強の仕方を取り上げます〜

 
 すっかり秋になりました。暑い暑いといっている間に、9月が過ぎてもう10月になってしまいました。我が家の金木犀(きんもくせい)もいいにおいをさせています。
 
 さて、まだ体育祭や文化祭なんていう学校行事が残っている人もいるかもしれませんが、勉強のほうは進んでいますか?特に受験を控えている人たちは、イライラし始めているんじゃないでしょうか?

 社会(高校では地歴)の中でも歴史、それも日本史なんていう教科は、暗記科目と思われて、分厚い教科書を前にして、ため息ばかりが出てしまう、なんてことはありませんか?

 受験関係の本などを見ると、「サブノートを作成しよう」なんてことが書いてあります。確かに、作る時間があり、ある種「おたく」みたいな人にはお勧めできますが、「今から受験勉強やらなあかん」という人には到底無理なことです。

 だのに、参考書には、「サブノート、サブノート」と書かれ、挙げ句の果てには、「サブノートのここの1センチ(1ミリだったかな?)のスペースが勝負」なんて書いてある。(ほら、読んでる人もいるでしょ。『○○の実況中継』とかいう参考書)あれ、困るんです。
 ホント予備校講師していたとき、何しろ相手は「天下の有名講師様」で(一説によると、あれでウンゼン万も儲けたというんだけど)、こちらは名も無き講師ですから、「サブノートは絶対に作らなければいけませんか?」という質問にホトホト困りました。

 しかも、受験業界は恐ろしい。入試シーズン直前には『今からでも間に合う・・・』とか、もうホント気が弱くなっている受験生の心理につけ込む本を出し、ああでもないこうでもないと、たぶらかせ(?!)、ついにはパニックに陥れるんですものね。


 そこで、「発想の切り替えを!!」と私は半ば絶叫に近い声で叫ぶことにします。

 「じゃあ、どうするねん?あたしらはどうしたらええねん?」という突っ込みがすぐにかえってきそうですから、私が予備校講師をしていた時に生徒諸君に語っていたことを記しましょう。
 
1. サブノートは作らなくて良い。 → 教科書を真剣に読みましょう!! 
 というものの、教科書を読むのはしんどいのです。でも、どんな参考書よりもうまくまとめられていて、しかも内容は優れています。何しろ、「文部省検定版」なんですから。お上が認めているんですぜ。

 といって、アンダーラインを引きまくったり、太字(ゴシック体の用語)を赤のマーカーで塗り、緑の薄い下敷きで上からその用語を見えなくして、用語の暗記をしているようじゃ、中間・期末対策にもなりません。欄外の脚注や図版・絵の下の説明文まできちんと読みましょう。意外にこういう箇所から出題されるのです。

 ともかく、2・3度は読みましょう。最初から最後まで。1冊の教科書を必死に丁寧に読みましょう。
 それが嫌なら、大枚を払って『学習まんが少年少女日本の歴史』(小学館)でも良いです。マジに読めば流れがわかります。これと教科書で同志社に合格した教え子もいました。

 
2. 問題集をやろう。
 → 中学生なら府県別公立高校の問題集と、受験を希望する私立高校の問題集を!
 → 高校生なら、そりゃ〜もう、天下の「赤本様」を!!!
 これも誤解の無いように言っておきますが、「せめて問題集5冊はやれ」などとふざけたことを書いてある参考書などがありますが、中学生の場合、普通、英・国・数・社・理の5教科型入試で、歴史ごときに5冊もやれるわけないでしょうが。
 高校生だって、文系私立大学の受験は英・国・地歴もしくは公民の3教科か、2教科選択ですし、国公立大学の受験なら、5教科ですから到底無理。ですから、志望大学別の赤本やセンター対策用の問題集をやって下さい。

 問題集をやった後は、特に間違った箇所に注意して下さい。単なるミスならいいんですが、そうじゃないなら、間違った箇所を教科書に戻ってきちんと勉強し直して下さい。じゃないと、後で命取りになりますぜ。歴史用語を平仮名で書くなんて絶対ダメですからその辺にも注意!!!
 
3. 大学入試の「センター型正誤問題」が嫌いという人へ
 こういう人多いでしょ。でもね、模擬試験作る側からからいうと、もうホント、センター型の出題って楽勝なんです。だってパターン化されてて、オチがあるんですから。「先生、今度はセンター模試の問題作成お願いします」なんていわれたら、もうラッキーです。

 では、パターンていうのは何かといいますと、よく似た語句を入れ替えたり、時代に関する説明をごちゃごちゃにしたりというやり方です。実例を後に紹介していますので、是非やってみて下さい。センターだけ日本史が必要という人は、赤本のセンター日本史を丁寧にやって下さい。
 
4. それでもまだ、不安だとか、赤本じゃつまらないから、別のものをやりたいという人へ
 ホントは「キミが気に入ってやっている問題集があればそれでいいんです」と私は言ってたんですけど、でも是非にという人がいると思います。
 まず、高校入試に関しては、上に記した1.と2.でOKでしょう。
 大学入試に関して、関西圏の私大入試に絞っていうと、本屋さんの回し者みたいで嫌なんですが、敢えて推奨するとすれば以下のものがいいでしょう。くれぐれも言っておきますが、入試に必要な知識を身につけるのはキミたち自身ですよ。

・全般的な動向を知りつつ、学力をつけたいなら、山川出版社『関西私大入試対策用日本史問題集』が一番手っ取り早いでしょう。

・いわゆる関関同立をめざすなら、私は断固として、松村勉編著『斬り捨て御免の日本史』(エール学園出版局)をお勧めします。
 知りません?松村センセって。関西じゃ有名な予備校日本史講師でっせ。エール予備校と河合塾で教えていると思います。まだ、酒飲みながら教えてるのかな〜松村先生(お体に十分気をつけて下さいネ)。
 この問題集は、レベル別に問題が配置されているし、解答(空欄補充)をする際にヒントになる説明はどこがが、太字で示されているなど、なかなかのスグレ物です。しかも、松村先生のノートが随所にあって、それがサブノートの代わりにもなっています。さらに、古い問題でもいい問題はずーっと掲載し続けてあります。一度ご本人にうかがったら、「いい問題は、捨てられない」とおっしゃってました。どこの関関同立問題集よりも良いと私は思っています。
 

 ともかく、今からが勝負です。「偏差値」とかいろいろなことで不安になったりすると思いますが、キミが大学を選ぶ時代です。嫌がらずにやって下さい。
  


チャレンジコーナー
正誤問題の実例
その1 縄文〜弥生時代に関して述べた次のT〜Wについて、正しいものの組み合わせを下の1〜6のうちから一つ選べ。(99年センター日本史B・第2問)
 
T 縄文時代になると、気候が温暖化し、海面が上昇したため、漁撈(ぎょろう)活動がさかんとなった。
U 縄文時代になると、弓矢が出現し、動きのはやい動物の捕獲が容易となった。
V 弥生時代になると、農業生産の発達にともない、貧富の差は次第に解消されていった。
W 弥生時代になると、青銅器や鉄器が普及し、石器や木器は使われなくなった。

1.T・U      2.T・V      3.T・W
4.U・V      5.U・W      6.V・W
   
正解は、1。これなど、時代の説明をごちゃごちゃにした問題の典型。
Vの文は、弥生時代は貧富の差が広がっていった時代だから、それを逆に書いてあるだけ。
Wも、「石器や木器が使われなくなった」という箇所がおかしい。ホラ、石包丁や木製農具が使用されているでしょ。

 
似通った語句の入れ替えというのは、例えば人物などの名詞や、数などを利用したりしたもので、その1と同じ99年度の第1問には、こういうセコイ出題がされています。
 
その2 下線部c 過酷な労働条件は、労働者に新たな抑圧を強いる に関連して述べた文として正しいものを、次の1〜4から一つ選べ。
 
1. 工場労働者の中心は繊維産業の女子労働者で、彼女らの多くは低賃金で働かされていたが、一日平均の労働時間は8時間だった。
2. 労働者が、賃金の引き上げや待遇改善を求めるストライキをおこすようになったのは、第一次世界大戦後からである。
3. 日露戦争後、労働者の保護を目的とする工場法が制定され、即時に施行された。
4. 各地の工場労働者の実態を調査した報告書である『職工事情』が刊行された。
 
正解は4。
1.の8時間労働は戦後、労働基準法が制定されてからのこと。ホラ、8時間なんて書いて引っかけてるでしょ。
2.のストライキは明治からありました。第一次世界大戦後ではなくて大戦前です。
3.は、工場法の問題を作成する際のおきまりのコース。工場法は即時施行されていません。1911年制定 → 1916年施行。即時がクセモノです。
 
 ね、前とか後とか、即時とかこういう微妙な表現でごまかすのです。少し気をつけて読むと解答できます。やってることはセコイでしょ。だから、出題は簡単なんです。

  
結論:問題文はじっくり読もう!!! です。