第1話:身近な日本文化史 −仏像の見方を知ろう−

 2000年5月12日付の朝日新聞にこんな記事が掲載されていました。
「首飾りのおしゃれ仏」 「門真・黄梅寺の飛鳥後期の像」という見出しのものです。
記事を簡単にまとめると、
門真市の黄梅寺(おうばいじ)で高さ10.2cmで右手をあげた鋳銅製の誕生釈迦立像が発見された
 というものです。
記事にも書かれているのですが、飛鳥時代(おおよそ7世紀)の仏像が発見されることはまれで、これまで30例ほど
しかみつかっていないそうです。                                          .
     
さて、ここからです。皆さんは
「仏像〜!?そんな抹香臭いもんおもろね〜。そんなん好きなヤツは変な奴かおじんくさ〜」と思ってそれでおしまい。
これではダメ。ここからが点数、イヤイヤ歴史をおもしろく感じるかどうかの分かれ道なのです。              .
仏像=抹香臭い=ダサイ=関係ない
というワンパターンから抜け出して下さい。
仏像にもいろいろあるのです。今回発見されたのは誕生釈迦立像という仏像です。仏様は、以下の表に示すように普
通、如来・菩薩・明王・天部の4つに区別されます。                                           .


如来 釈迦如来、薬師如来、大日如来、阿弥陀如来、毘廬舎那仏など。
如来は悟りを開いた人のこと。だから、俗世の名誉やきらびやかさに動じない。
飾りをつけず質素な法衣を着ただけのものです。
菩薩 観世音菩薩、日光・月光菩薩、地蔵菩薩、文殊菩薩など。
菩薩は悟りを開く前のインド王子ゴータマシッダルーダの姿。
だから冠をかぶり、胸にネックレスなどを身につけた派手な姿をしている。
よくいるでしょ、ええとこのボンボンでエエカッコシが。まさにあれです。
但し、日本の庶民のアイドル的存在である地蔵菩薩(お地蔵さん)は質素。
明王 不動明王、愛染明王など。
悪を懲らしめる仏。怒りの姿をしている。
不動明王は火炎を背に牙をむき、剣を持つ。
円城寺の黄不動という絵画などを思い出して下さい。
天部 梵天、帝釈天、弁財天、大黒天、四天王、執金剛神、金剛力士、八部衆など。
仏教が成立する以前からのインドの神様たち。
もともとは釈迦と敵対していたが、後に釈迦に帰依して守護神になった。
バラエティーに富む。


これだけわかっただけでも何となく教科書や資料集などで見る仏像がわかるように思えませんか? 例えば、お地蔵
さんは菩薩だったのか、とか映画フーテンの寅さんが生まれた葛飾柴又の帝釈天はもともとインドの神様かなど。 .
 
ところで、上の表を今一度見て下さい。何か気づきませんか?
 門真のお寺で見つかった仏像はお釈迦様なのです。
ということは、如来になります。ですから、普通質素なお姿をしているはずなのです。
でも、「首飾りのおしゃれ仏」だった。
しかも記事によると「スカート状」のものを身につけていたのです。だから珍しい
ただでさえ、飛鳥時代の仏像が見つかること自体が珍しい上に、釈迦(=如来)のくせに派手な仏像「こりゃーおもし
い」ということになりました。たかが新聞に掲載された仏像の記事といえども侮れないのです。            
近くの人はぜひ一度黄梅寺にいってみて下さい。


家族みんなで考えよう
第1問:次の文中の(    )の中にあてはまる語句を考えよう。
   ( 1 )や蘇我氏は、仏教をあつく信じ、世に広めようとしたので、都のあった飛鳥地方(奈良盆地南部)を中心
に、仏教をもとにした文化が栄えた。これを飛鳥文化という。飛鳥文化を代表するのは、( 1 )が建てた( 2 )の建
築やそのなかにある、釈迦三尊、百済観音などの仏像である。  (東京書籍『新編新しい社会歴史』41pより引用)
      
第2問:次の1〜4の文のうち、正しいものを一つ選んで下さい。
 1.飛鳥文化は、遣隋使によってもたらされた随の文化を基調としたものである。
 2.飛鳥時代の仏教は国家仏教ともいわれ、国家が仏教を保護して、飛鳥寺や大官大寺などの官立寺院を造営した。
 3.法隆寺金堂の釈迦三尊像は、鞍作鳥(止利仏師)の作といわれ、そこには中国北朝の北魏の仏像と同じ様式が
    見られる。
 4.現存の法隆寺金堂は飛鳥様式の代表的な建造物で、法隆寺が創建された7世紀初めに建てられたものである。

こたえ
第1問  ( 1 )  聖徳太子          ( 2 ) 法隆寺  
高校入試の定番です。漢字で書けたかな?
お父さん、お母さんが不正解だったら、ちょっと自慢してみよう。
第2問  正解は 3
大学入試センター試験からの出題です。1.2.4のどこが誤りかチェックしましょう。